感恩碑（広川町）

感恩碑は、広村堤防中央部の海側の波除石垣の上に建てられています。
往古の広村の歴史に触れながら、災害から広村を守り、発展させてきた幾多先人の遺徳を偲び、最後に後世のため私財を投じて堤防を築いた浜口梧陵の偉業とその徳を称えたもので、昭和8（1933）年12月に建立されました。
毎年の津波祭はこの前の広場で行われ、小・中学生も式や堤防補修の行事に参加します

広村之地西北臨千海湾遙望阿州之山姿干森渺之間東南興隴畝相
接遠見霊巖明神之巒峰之屹立風光絶佳南紀之一要津也伝云畠山
氏領当国也築城於東広之山上号広域又構邸宅於海濱簗石堤四百
余間以防風涛之庚矣寛文年間藩祖南龍公築和田之石堤長百二十
間幅員十有七間以便繋舟也然雨宝永四年十月四日有大海嘯闔村
漂没死者三百余和田之石堤崩壊矣安永十年里正飯沼若太夫等乞
官而修築之寛政五年四月経始享和二年十月竣役其後安政元年十
一月五日地大震海潮洶湧死者三十余名聚落蕩然将瀕饑餓浜口梧
陵翁等焦慮慰撫捐私財以振救之又奥同族東江翁相諮建白於官投
巨費而築堤防長三百七十間高二間半堤礎幅員十一間也安政二年
二月起工同五年十二月竣成矣又移植松樹数百抹於堤脚以欲防海
嘯之禍也鳴呼何之世莫夫変地異乎先賢為子孫所企劃如斯誰不感
荷厥恩徳乎庶幾追憶愛護先賢之偉業以可不備将来不測之災禍哉
昭和八年五月広村民相諮建碑勒之云爾

（現代訳）
広村（現広川町）は、西北を湾に面し、はるかに阿波の山々を広々とした海の彼方に眺める。東南は田畑がつづいて遠く霊巌寺山や明神山の峰つづきがそびえ立っているのが見える。景色は美しく、南紀地方の重要な港の一つである。伝え聞くには、かつて畠山氏が当地を治め、東広の山上に城を築き広城と呼び、また海辺に邸宅を構え、400間余の石堤を築いて風波の害を防いだという。寛文年間（1661年~1672年）、紀州藩祖南龍公（徳川頼宣）が和田の石堤長さ120間（約218m）、幅17間（約31m）を築き、繋船の便を良くした。しかし、宝永4（1707）年10月4日に大津波が有り、村中全て水没した。死者は300名余りを数え、和田の石堤は崩壊した。安永10（1781）年に里正飯沼若太夫（当時庄屋、のち大庄屋）などが藩に願い出て、これを修築した。修築は寛政5（1793）年4月から始まり享和2（1802）年10月に完了した。その後、安政元（1854）年11月5日、大地震大津波が起こり、死者30名余り、集落は跡かたもなくなり、飢餓に瀕しようとしていた。濱口梧陵翁らは焦慮する村人を慰め、私財を投じて救済した。また、濱口東江翁と諮り、藩に対し、巨費を投じて長さ370間（約670m）、高さ2間半（約4.5m）、基礎部分の幅11間（約20m）の堤防を築くことを建白した。工事は安政2（1855）年2月に起工し安政5（1858）年12月に完成した。また、数百株の松を堤脚に植え、津波の被害を防ごうとした。ああ、いつの時代にか天変地異がなくなるのだろうか。先人たちは、子孫のために以上のように取り組んできた。誰がその恩徳に感謝しないでおられようか。先人の偉業に思いをはせ、愛護することで、将来の不測の災害に備えることができないかと強く願う。
昭和8年5月広村の村民で相談し碑を建てこれを刻む


Photo Canon EOS 5D MarkⅢ
H29.8.26
住所: 和歌山県有田郡広川町広