その存在を好むと好まざるとに関わらず、クラウンは偉大な車と言えましょう。
今年で登場してから58年が経過するようですが、日本がまだ貧しい時代に生まれて今日まで「日本人が日本で使う上での最高」を目指した車は他に存在しないと思います。今や大排気量冬の時代の中で登場した新型クラウンですが、果たしてどこがどう変わったのかは大いに興味がある存在でした。
遅まきながらではありますが、そのクラウンに乗る機会がありました。
最初のスクープの段階では賛否両論あったシングルフレーム状のグリルですが、こうして実車を目の当たりにすると、思った以上に自然に見えてしまうのはクラウンの魔力かも知れません。サイズも他の車に比較して拡大されていないのは、やはり日本国内での使い易さを考えた見識と言えそうです。
先代モデルに比べるとエッジが立ったデザインに変わりました。全体的にはあまり変わり映えしない感もありますが、伝統の横一文字のテールランプ配置で、どこから見てもクラウンである事を主張しています。
ハイブリッドは来月からの生産となるそうで、今回はガソリンモデルの2500cc車です。今回は市街地のみではありますが、発進時のトルク感は比較的大人しい印象があります。歴代クラウンはこの発進時の加速を重視していたのとは大きな違いで、このセッティングも燃費には好影響が出るのでしょう。
マイルドに発進してしまえば、あとは全てのタッチがとにかく軽い車です。恐らくそのサイズも含めて市街地で走行する事に限定すれば、これほど快適な車は他に無いと思います。そしてあまりに快適過ぎて、これ以上の感想が出て来ないというのが正直なところですが、逆に癇に障る部分が無い車というのは稀有な存在とも言えそうです。
インパネ周りは歴代クラウンを乗り継いだユーザーであれば、瞬時に何が何処にあるか戸惑う事は無いと思います。最近レクサス系はマウス状のスイッチをコントロールする方式に変更されていますが、使い勝手はこのタッチパネル式に軍配を上げます。ただ先代まで存在したサイドブレーキの解除レバーが姿を消して、今回より解除も足踏み式となりました。これは個人的にはいっそレクサスにあるオート式にするべきだったように思いますが…
この個体は革シートなので目立たないのですが、ファブリックシートの場合でもドアパネルの内張りはレザー調になるそうです。ここは共にシートと同じファブリックのほうが良いと思うのですが…
更に先鋭的なグリルを持つアスリートですが、個人ユーザーさんにはこちらが人気のようです。私的にはクラウンにはスポーティーな要素を期待しないのでロイヤルのほうが好みです。
ディーラーさんへの往復には我が家のクラウンエステートで参りましたが、10年以上前のモデルと比較しても変わらない部分が多々存在するのはクラウンの強みでもあり弱点なのかも知れません。何故弱点かと言えば、同じであるが故に走行距離が伸びていなければ買い換える理由が見当たらない気がします。事実内装の質感などは確実に以前のモデルのほうがクオリティが高く、もう少し価格を上げても内装の質を上げるべきではと思えるのです。ただレクサスGSとの棲み分けがある以上は致し方ないのかも知れませんが…
しかし依然として国産乗用車としては理想的な一台で、過度に車に趣味性を求めないのであれば最良の選択だと思います。そしてきっと末永く乗れることでしょう。
いつも書く事ですが、私の亡き父や兄は大のクラウンファンでありました。新型のクラウンが登場する度に「これは彼らの知らないクラウンなんだな」という事と、「彼らがこのクラウンを見たら、何て言うかな」としみじみ思うのです。
Posted at 2013/01/20 17:55:34 | |
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