以前にも書いた通り、ウチの奥さんはスポーツカーに強い偏見を持っています。
その主な理由には「2人しか乗れない上に荷物も積めない」とか「音がうるさい」「長距離同乗すると疲れる」などなど、感情論を抜きにした理路整然としたロジックを展開します。「門前の小僧、習わぬ経を読む」ではありませんが、女性としては相当車に詳しくなっているので、その持論にはある種の整合性を持っており、反論に窮する事もしばしばです。
で、旧くからの年上の友人でポルシェセンターのエキスパートの方から「マカン来たから見てみない?」とお声が掛かり、スポーツカー嫌いの奥さんと共に乗って参りました。
ポルシェのSUVといえばカイエンを最初に連想します。個人的な偏見で申し訳ないのですが、このカイエンの中でもカイエンターボは私の嫌いな車で、極端に悪い燃費や高いメンテナンスコストを差し引いても「ブランド性」「動力性能」「居住性」そのどれもが高いレベルで実現されています。が、この車を見ていると名門出身で幼少時から「我慢」という事に無縁でワガママ放題育った肥えた金満家を連想してしまうのです。実際都心で見かけるカイエンターボにマナーを守った運転を見た事が無く、そのワガママな性能にものを言わせて下品な無謀運転をするオーナーには、およそ知性を感じる事が出来なかったからであります。
前置きが長くなりましたが、「どうせまたカイエンを小さくして売れる車を狙ったんでしょ」というカイエンの廉価版的な先入観を持って試乗したのですが、その穿った先入観を大きく修正しなくてはいけない程に光る部分を持った車でした。
シリーズの中でも一番ハイパワーなマカンターボになります。
大きさは幅1925mm、高さ1625mm、長さ4700mmで重量が1980kgと2トンをギリギリ切ってます。
V6ツインターボは3.6Lで400psを発生します。他にも同じV6ツインターボで3Lの340ps、直4ターボで237psもあります。基本的にはアウディQ5と共通なのですね。
乗り込んでキーを捻ってエンジンに火を入れると、恐らく歴代のどのポルシェ車よりも静かに目を覚まします。プッシュ式スターターが主流になった今でも、ポルシェはキーを差し込んで捻るタイプにこだわっているところに好印象です。アクセルON~最初の数十メートルでのトルク感も厚みがあって、先日のレンジローバースポーツの3Lスーパーチャージャーよりも余裕のある静かなスタートが可能です。道が空いて強く踏み込むと、FRから4WDになるようですが、何とこの4WDは後輪にパワーが掛かるのが体感出来るコダワリ様です。最新のPDKの制御も更にお利口になって、市街地走行で積極的にパドルを操作せずとも車に全て委ねたくなる程に快適です。
この車はエアサス仕様になっていましたが、3段階の調節が可能です。一番コンフォート寄りでスタートしてみると、まるでジャガーXJのような優しい乗り心地に驚きです。スピードを増して硬めの設定を選んでも、ポルシェとしては柔らか目の味付けになっているようです。因みにこの車にはオプションの21インチが装着されていますが、今回はオーバーサイズ感は感じませんでした。
この個体は見本という事もあって320万円を超えるフルオプションで、総額1320万円!のプライスが付いております。拠ってダッシュボード等も総革張りで質感も上等であります。スイッチ等も最近のポルシェと共通で、カチッとした操作感のボタンが緻密に並んでいます。このあたりはイギリスやイタリアの車はユルいので、ドイツ車を一番感じた部分でした。
途中から奥さんにリアシートを試してもらいましたが、乗降時の開口部が多少狭い事以外には快適との事です。因みに女性がスカートで乗っても大丈夫との事でした。
ラゲッジルームはリアの傾斜が強いので、少し大きめのセダン程度と考えたほうが良さそうです。
件のセールス氏によれば「カイエンはSUVだけどマカンは全く新しいジャンルで作っていて、走りについては可能な限り911をリスペクトした」との事です。で、私的にポルシェの車って、非日常のある一定の速度を越えたところで凄い説得力を感じた車が多いのですが、日常の走行に於いてもとても素直で優しい走りを持っていたところが今までと違う新しさを感じました。私は車のほうから「さあ、もっと走れ!」とばかりに檄を飛ばされるのが嫌いでドイツ車を敬遠しているのですが、そんな人が乗っても応えてくれるだけのものを持っているようです。
この車、仮想敵はメルセデスGLKやBMWのX5、またはイヴォーグあたりも入って来ると思いますが、それらに比べるとポルシェブランド料が乗っているので価格がやや高めです。その辺を加味すると、今回は乗っていませんが直4ターボあたりはきっと良いだろうと思うのです。
真後ろはカイエンに似てますが、テールの傾斜が強いのでフロントデザインとのギャップは少ないように思います。
その定義は百台百様ですが、「気持ちよく走る車」はやはり良いものです。昨今のエコを最大の売りにした車は、どこかこの「気持ちよく走る」という部分を切り捨てた車が多すぎて好きになれません。そうした部分のせめぎあいというか落しどころの上手さを見ると、やっぱり欧州車って良いなと感じます。
因みにこのマカン、ウチの奥さんが初めて気に入った記念すべきポルシェとなりました。
Posted at 2014/12/07 20:05:37 | |
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