考えてみると、ここ最近新型車の事を書くのが少なくなったように思います。
それは決して車に対する関心が失せた訳ではなく、「これに乗ってみたい」という食指を動かす車が無かった事と、ここで今まで6年くらいの間に自分の想いを書き切ったと感じる事もあります。
そんな中でジャガーXEに乗る機会があり、久々に最新鋭を観察するのも良いかと書いてみます。
さて、このクラスのセダンは激戦区で粒ぞろいであります。つまり自分の趣味嗜好でどれを選んでも優秀な車ばかりなので、さほど車に詳しくないユーザーでも「こんな筈ではなかった…」というハズレの少ないセグメントではないでしょうか。
そんな中でも私的な好みは抜きにして、30年以上不動のベンチマークはBMWの3シリーズだと思っています。車体のサイズや全体のバランスも含めて「走る」という事にかけてこれほど優秀なセダンは他に無いと思っています。解りやすく申せば、メルセデスはCクラスにはSクラスをリスペクトしたデザインを与える事を続けていますが、BMWはその逆に7シリーズもどちらかと言えば下位のスポーツイメージが与えられている感があります。私はSクラスも7シリーズもビジネスユースの車だと思っていますが、Sより7に乗っている人のほうが5歳は若く見えるような気がします。
以前はジャガーもXタイプでこのセグメントに切り込んでいましたが、どちらかと言えばハードの部分よりもソフトの部分で上位のXJをリスペクトしていた車で、何でもかんでも車は飛ばせばいいジャーナリストには酷評されていました。私はそういうジャーナリストが騒ぐほど悪いとは思いませんでしたし、Xタイプと3シリーズという異質なものを同列でしか見ないジャーナリストはガキだと思いました。しかしそれでは商業的には成功する筈も無くジャガーはこのセグメントから撤退しましたが、今度は綿密に現代のジャガーとは何かという課題をこのサイズに余す事無く表現したのでしょう。
これまた「現代のジャガー」顔であります。これから発売される新しいXFもこんな感じですね。
ただ顔をここまでXJ顔にしたなら、リアもXJ同様の個性が欲しいような気がしますけど…
外板の一部はスチールですが、これまたお得意のアルミボディです。全長4672、全幅1850、全高1416と標準的なサイズです。それでも若干幅が広いでしょうか。
早速ドライバーズシートに収まります。で、ジャガーユーザーとしてはこの瞬間が一番ジャガーを感じたところであり、低めのポジションでバックレストをたて気味にして、腕をストレートに伸ばすという伝統のドラポジがこの2015年登場の最新型にも継承されています。そしてそこから見える景色もまたジャガーの景色であり、こうした芸当は老舗の成せる技なのでしょう。
Fタイプでは通常のシフトノブで登場しましたが、サルーン系はダイヤル式です。ここは私的には普通のノブが好ましいのですが…
この4気筒2000ccターボ+8速ATはジャガーではすっかりお馴染みになったユニットですが、この200ps版の上に多少出力upしたバージョンもあるようです。この他にもV6やディーゼルもあるそうですが、恐らくこのエンジンが全体の9割を占める最量販機種となるのでしょう。
実際に走ってみると、軽い吹け上がりで次々と早めにシフトアップするという最近の車のお約束と言える走りをします。この辺に関しては何の不満も無く、恐らくは燃費もかなり良いのでしょう。ならばせめて音質でジャガーを演出して欲しいと思うのですが、この4気筒に関してはややチープな音質でありました。これは同じエンジンを搭載したイヴォーグのほうが遮音性が高いだけにやや残念です。
少し頼りないように感じてもキチンと路面の凹凸をいなす仕事をする猫足…いや猫足風味はこの車にも生きています。これはきっと曲がるのが楽しくなる仕様だと思われます。ただ、この個体の19インチはオーバーサイズ気味で、荒れた路面に入ると途端にバタバタする印象があります。が、買う側で考えるとビジュアル重視も理解出来ますが。
最近やたら気になるドアのメッキですが、上手く上下を分けたデザインなのでR部分での継ぎ目が無く綺麗な仕上がりでGoodです。
内張りは…こんな感じです…
リアシートも広々ではありませんが、座った時のポジションはこのクラスで一番良さそうです。何故なら他のこのクラスのリアシートはバックレストが寝すぎの印象がありますが、英国車はきちんと立っています。
広さは標準的ですが、オートトランクが装備されないのならヒンジはパンタグラフ式でスペースを稼ぐべきでは・・・
一般的に見れば、非常にバランスの良いスポーティーなセダンでありました。個人的にはFタイプであそこまでやった拘りをここでも見せて欲しかったのですが、このセグメントのセダンとしてあまり尖った事は出来なかったのでしょう。近日中に発売されるXFは更にサイズアップされるとの事なので、その受け皿という意味もあるようです。
数あるライバルの中でも充分にジャガーらしさは生きているように思います。が、そのジャガーらしさとは市街地の10分程度の試乗では伝わりにくく、最低一日かけて乗ると「なるほど」となる類のものなので、一言で伝わらない所がジャガーの美点でも欠点でもあるように思います。BMWのスポーツがトラック競技だとすれば、こちらは射撃や乗馬という他と競うものではなく自身と向かい合う類のスポーツでしょうか。
お店でこうした最新のジャガーの中にこの350を置くと、ご先祖様というか遠い昔に造られたクラシックカー的な風情を早くも醸し出しておりました。こうなると先が楽しみですらあります。
そしていよいよ近日中に「鳳凰」がやって来ます。
Posted at 2015/08/16 17:12:20 | |
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