今回は、後々振り返った時に、この頃はこんなことを考えてたんだなぁって判るための、自分向け記録がメインです。
主に物理計算の話なのですが、かなり計算する部分が多いので、基本的に計算式はすっ飛ばして記載します。
※計算式自体は、エクセルで作ってあるので、各パラメータを変更した時(住友→ブレンボに変更など)には、振り返れるようにしています。
では、始めます。
1月13日に阿讃サーキットを走って、ベスト更新するも、主にその消耗度合から、変更を検討し始めたブレーキシステム。
ネットや口コミなどから、フロントだけ強化してもバランスが崩れてあまり良くない、とか、バネレートを高めるとリアの効きが必要になる、など、直感的なイメージからも、「そうかもしれないなぁ。」と思うことがありました。
しかし、今のブレーキシステムから「何を」、「どうすれば」、「どのような状況で」、「どれ位」、「どうなるか」というのは、実際にパーツ等を交換して、自分で走って感じるしかない、と何となく思っていました。
・・・が。
あるじゃないですか、お金をかけなくても、ある程度イメージする方法が。
そうです。
「物理学」です。
物理計算して、各種変化を数字で把握しよう!というものです。使う各種パラメータは、私が阿讃サーキットを走る上での物を使います。
1月13日に阿讃サーキットを走った際、「今のはイイブレーキングだった!」と思った時のログがこちらです(前半分がベストラップの時の物)。
青線が速度(km/h)、緑線が加速(減速)度(G)です。
加速(減速)度(G)は、前後の速度変化を数サンプルで算出している関係で、その瞬間ピンポイントでの時間微分にはなっていませんが、前後が安定するピーク減速度(G)は、それぞれのブレーキングの相対比較に使うことができそうです。
そのピーク減速度を見ると、大体0.85~1Gの減速となっており、巷で言われるハイグリップラジアルタイヤの限界(0.9~1.0G)の減速が出来ているようです。
というところからすれば、既にタイヤグリップキャパを上手く使って減速出来ているようにも見えますが、そもそも1G減速をしているとき、BNR32の前後タイヤにかかる荷重がどうなるのか、計算してみました。
結論だけ書きますと、車高を前後30mm下げたBNR32で、1Gの減速を行うと、前後タイヤにかかる荷重の比率は、
フロント 対 リア = 1 : 0.32
となります。
次に、BNR32の純正住友ブレーキシステムの前後バランスを計算してみます。
まずはBNR32のブレーキマスターの緒元です。
そして、ご存じの方も多いと思いますが、BNR32のマスターシリンダのPバルブのスプリットポイントは、液圧20kg/cm2以上でフロントに対して40%に減圧されます。
※スプリットポイント20kg/cm2、レデューシングレシオ0.4
続いて、BNR32住友キャリパーの諸元
●BNR32住友キャリパー(F)
アルミ対向4ピストンキャリパー
シリンダー内径:φ40.4×4
パッドサイズ:長さ116.0×幅50.0×厚み10.0
●BNR32住友キャリパー(R)
アルミ対向2ピストンキャリパー
シリンダー内径:φ38.1×2
パッドサイズ:長さ71.8×幅36.5×厚み11.5
以上から、BNR32純正住友ブレーキシステムで、ブレーキペダルを踏んでいった際の各種値を計算してみました。
ピンクの網掛けがスプリットポイント以降です。
この表からすれば、自分がどれくらいの強さでペダルを踏んでいるのかわかりませんが、ペダル踏力15kgの時に、前後のブレーキバランスは、
フロント 対 リア = 1 : 0.326
になります。
これ、似たような値が先ほど出ましたよね・・・?
そうなんです、(重心高465mmの)BNR32が1G減速するのに最適な、タイヤ荷重の前後バランスなんです。
タイヤは荷重が係るほど、リニアにグリップは上がらない、という性質がありますので、ここまで完全には一致しないと思いますが、それにしてもかなり実態に近い値がでました。
ということで、この計算の仕方自体、そうそう外れてはいないよう思います。ていうか、かなり使えそうです。
そして、試しにBNR32Vspec~BCNR34前期に装着されたブレンボブレーキシステムで同様の計算をしてみましたところ・・・。
●BNR32 (V-spec),BCNR33,BNR34前期(N1除く)Bremboキャリパー(F)
アルミ対向4ピストンキャリパー
シリンダー内径:φ44.0×2,φ38.0×2
パッドサイズ:長さ119.6×幅54.0×厚み11.9
●BNR32 (V-spec),BCNR33,BNR34前期(N1除く)Bremboキャリパー(R)
アルミ対向2ピストンキャリパー
シリンダー内径:φ40.0×2
パッドサイズ:長さ76.6×幅44.0×厚み9.6
ある踏力で発生するキャリパー単体の力は、ブレンボの方が5~6%大きいのは想像通りでしたが、ローター径も含めた前後ブレーキバランスは、スミトモとほぼ一致(誤差1.2%未満)していました。これなら確かに、ブレンボに変えても前後バランスの狂いは無さそうです。
ちなみに、BNR34後期のリアΦ322mmローターだと、同じパラメータでは当然リア寄りになりますが、BNR34の前後重量配分56:44を入れると、1.1G減速で、タイヤ荷重とブレーキがバランスします。
BNR32で1.1G減速させると、リア荷重がどんどん減っていってバランスが崩れていくところを見ますと、BNR34後期は1.1G減速目指して開発されたのかもしれませんね。
ということで、減速におけるタイヤ荷重とブレーキの前後バランスが大体把握できましたので、今後のブレーキをどうするか、もう少し夢想しようと思います。
ところで、BCNR33ブレンボ、人気過ぎて手が出ません・・・>_<