少し前ですが結構足回りの話を書いてたので、記事を集めると基礎的な部分をそこそこ網羅してるんじゃないか?と思えてきました(笑)
ここで言う「基礎的な部分」というのは、例えば
自動車操縦安定性講座入門とか
サスチューニングの理論と実際とか
車両運動性能とシャシーメカニズムとかそういうので基本として扱われてるような部分のことです。
そんなわけで「足回りの基礎」ってカテゴリ作って、もろもろブチ込んでみました(笑)
「これから足回り勉強したいけど、とっつきにくい本は嫌だなぁ~」って人などに、足回りの知識に関心を持ってもらう上で少しでも役に立てばと思います。
あくまで「関心を持ってもらう上で」というレベルなので、真剣に勉強したくなった方は上記参考文献などをご覧下さい。
あと、いくつか足りてない項目があるので、少しずつ追加していきますね^^
さてみなさん「コンプライアンス」というと何を思い浮かべますか?
「法令遵守」って耳が痛いんじゃないでしょうかね(笑)
今日はサスペンションのゴムのお話のほうです。
この場合のコンプライアンスとは「物体に力が加わって変形すること」というような意味です。
ところで上の図を見てください。
壁と板の間にスポンジが挟まっています。
薄いグレーのスポンジは「柔らかいスポンジ」です。
もう、ふにゃふにゃです!
それに対して、濃いグレーのスポンジは「硬いスポンジ」です。
ぐぐーっ、って大きな力をかけないと潰れません。
さて、ここで板の真ん中を押してみると、どうなるでしょうか?
柔らかいスポンジは潰れやすいので、板が斜めになりました。
いいですよね。
板はさっきまで壁と水平だったのに、横から力を加えたら、斜めになりました。
これが大事です^^
で、今度は、こういう形のアームがありまして、
この空洞のところにゴム製のブッシュを入れて、
これを2本、サスペンションメンバに取り付けます。
アームの反対側には(ハブを介して)タイヤが取り付けられます。
とりあえず、これをクルマのサスペンションに見立ててください。
ところでクルマが左カーブを曲がるとき、左にハンドルを切ると、右側に横Gがかかりますね。
クルマ自体は遠心力によって右側(コーナー外側)へ向かおうとするのに、タイヤはグリップ力によってその場に留まろうとしますから、タイヤには「車体側へ押される力」がかかっています。
分かりますかね、例えば氷の上を走るときのようにタイヤが「つるーっ」と滑ってしまったときは、この力はかかりません。
タイヤがグリップすることにより、タイヤが車体側へ押される力が生まれます。
自動車工学の世界ではこの力を「横力」と言い、また「車体に対して内側方向にかかる力」のことを「内引き方向の横力」と言います。
勘のいい方はすでにお分かりかもしれませんが、内引き方向の横力がかかった状態と、一番最初のところで出てきた壁&スポンジ&板の例は、同じようなことを表しています。
サスペンションのゴムブッシュはスポンジほどは柔らかくないので、まったく同じでもありませんが、金属と比べれば柔らかいという意味では似ています。
つまり、ゴムが柔らかいほうが変形してたくさん潰れるし、ゴムが硬いほうがあまり変形せず潰れない、ふたつの硬さに差があれば、板が傾くのと同じでタイヤが傾きます。
タイヤは、内側を向けば「トーイン」、外側を向けば「トーアウト」ですね。
どのくらいの硬さのブッシュを使うかによって、横力によるトーイン/トーアウトを制御しようというのがコンプライアンスステアです。
ロードスターのリヤサスペンションに関しては「トーコントロールサスペンション」と呼ばれているので、そういう呼び方で知っている方も多いかもしれませんね。
実際は上のような2点支持のモデルとは違い、アッパーアームを含めた3点支持になっています。
またNA/NBロードスターの場合、ロアアームは2本ではなく一体もののH型アームが採用されています。
このリヤサスペンションについては、内引き方向の横力でトーイン、外引き方向の横力でトーアウトです。
したがってアンダーステア方向になるようにセッティングされていると言えます。
これを例えば前後のブッシュの硬さを揃えたりすれば、横力トーインをなくすことが出来ます。
金属製のブッシュ(ピロボールブッシュ)を使っても同じです。
ゴムによるアンダーステア方向のセッティングをキャンセルすることになるので、つまりオーバーステア傾向になります。
横力トーインの量はNA型ロードスターのほうがNB型ロードスターより多く、NB型へのモデルチェンジの際に変化量を小さくしたそうです。
理由は「あんまり大きく動くと、なんか変な感触だから」だそうです。
ところで「トーコンキャンセラー」という商品があって、NA/NBロードスターのリヤアッパーアームのハブ側ブッシュを硬質ウレタンなどに交換しますが、この部分を交換しても横力トーインの量は少ししか変わらないと思います。
本来の意味合いでトーコンをキャンセルしたいなら、ロアアーム車体側ブッシュの「前後の硬さを揃える」のが効果が高そうですね。
ただ、トーコンキャンセラーでも、キャンバ変化は結構減ると思います。
「トーコンキャンセラー」という呼び方が正しいかどうかは分かりませんが、何かしらの効果はありそうです。
具体的にどの部分がどう変化するのか、そのあたりをじっくり考えてみると、ブッシュ変形によるアライメント変化…つまりコンプライアンス系のセッティングが身近に感じられるかもしれませんね^^
「コーナーの一番Gがかかるところでスピンしにくくしたい」
「曲がり始めから立ち上がりまで、ずっと同じように曲がりやすくしたい」
「とにかく少しでもアンダーステアにしたい」
初期値としてのアライメントと、横力がかかったときのアライメント変化、そのふたつを考えながら、いろんな目的に応じたセッティングが出来るとよいですね。
ブッシュを硬くしてけば、アライメント変化は減る方向です。
またタイヤのグリップ力が上がると、横力が増えるので、アライメント変化は増える方向です。
さぁ、あなたの希望する組み合わせは…どんなでしょう?^^
ちなみにですけど、今回のコンプライアンスステアのお話と
ロールステアのところで出てきたジオメトリのお話を組み合わせると、タイヤ前引きや後ろ引き時のアライメント変化も読み解けます。
つまり、加速時や減速時のトー変化です。
想像してみてね^^
(↑理屈が同じなので書くの面倒くさいだけとも言う。笑)