数日前からにわかに故中沢啓治氏原作の「はだしのゲン」の名がニュースで耳に入ってきました。
私はこの作品を小学校の図書館で読みました。
他の友人達も同様で、中学に入ると会話の中に「ギギギギ」「くやしいのう」などと引用したものです。
友人の一人は、未だによく偽広島弁を使って引用していますw
松江市教育委員会が学校図書館での閲覧制限を指示しているとのニュースに、「ああ、過激なモノに蓋をするご時勢か」と最初は思いました。
ところが、よくよくニュースを聞くとちょいと事情が違うようです。
松江市教育委員会は作品の「過激描写」を問題視したとの報道が主流ですが、正確には「愛蔵版の6巻以降」の「旧日本軍の行い」の「過激描写」を問題とし、「全巻閲覧制限」をかけたそうです。
私も今回の騒動で初めて知ったのですが、「はだしのゲン」の連載は1973年から1985年と12年かけて連載され、当初は週刊少年ジャンプで連載されました。しかし妹・友子の死以降のエピソードは「市民」「文化評論」「教育評論」と共産・日教組系の紙面で連載されたのです。
私は最終巻だけ小学校に無かった為(閲覧制限ではなく、単なる紛失だと思いますw)結局成人してから読みましたが、大人になったせいもあり最終巻は特に政治色を強く感じました。
今回の騒動で私が改めて「はだしのゲン」の内容を振り返って思うのは、
①作中の原爆投下後の広島の描写は、被爆体験者である中沢氏しか描けない貴重な物であり、後世に伝えなくてはならない。
②作中、米国と戦時の日本の国体=天皇を激しく糾弾する部分があるが、これは戦争と被爆を経験した中沢氏の偽らざる感情だろう。
快く思わない人も多いだろうが、少なくとも戦争を経験してない人間がとやかく批判すべきではない。
③作品前半に描かれる戦中の警察による拷問や軍隊のしごきは、戦中反戦を唱えた日本共産党などが治安維持法により激しく弾圧された事実や、軍隊にいた私の祖父の話からも実際にあった事だと思う。
しかし、作品後半に進駐軍がゲン達を拉致して朝鮮半島に送り込むスパイに養成しようとしたり、
戦中中国で日本軍が行ったされる虐殺行為を槍玉にあげ、ゲンが学校の卒業式で君が代斉唱を拒否したりするエピソードは史実の誇張では?と疑問を抱く。
日教組の君が代拒否って、もしやこれが元ネタ!?
どうも松江市教育委員会は③を市民の指摘から問題視し、今回の閲覧制限という措置を取ったようなのです。
実は、私は閲覧制限はやりすぎだと思ってます。子供とはいえ、最終的には読む側が判断する事です。
ただ、この件に関して作品を読んで少なからず影響を受けて育った私でも、
「被爆体験者が描く真実の作品」が閲覧禁止になった!的なメディアの論調と非難の大合唱にゲンナリしてしまいました。
しかし原爆を題材にした中沢氏の作品は他にも沢山あるのですが、世間が「はだしのゲン一本槍!」なのは裏返せばそれだけ愛されている証なのでしょう。
Posted at 2013/08/23 02:23:49 | |
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